ドクターP その4

「ドクターP」が、医師になる決意をキャリアセンターに告げに来てからの一週間、Bは、職業「医師」について、色々と自分なりに調べてみました。医師になりたいという学生のキャリアカウンセリングは初めてでした。ドクターPからの決意を聞いた直後は、呆然として「医師 求人」のサイトなどを眺めていましたが、何を彼に告げれば良いのか何も頭に浮かばないので、キャリアセンターの休みの日に、ご近所さんの実際に医師になったお兄さんを訪ね、医者になるまでの事、医者になってからの事などを、直接、聞いてみる事にしました。ご近所のお兄さんは、幼少期に、大変お世話になった面倒見のよいお兄さんのまま、優しそうな医師になっていました。Bが、通称「ドクターP」という、経済学部に所属している学生が医師を目指したいと言っていると告げると、全く驚いた顔をみせずに、そのような医師に何度か出逢った事があるという体験談を話してくれたのです。実際に、医師をめざす人達は、両親や親戚などの近親に医師がいる事が多く、周囲の勧めもあって医師を目指す人が多い中、そのように社会人経験を経て、自分の意志の元、医師になる人が増えてきているように感じるというのです。お兄さんは、ドクターPの医師になる気持ちが強いのであれば、叶わない夢ではないはずだと言うのです。医師になる事は決して楽な道のりではないけれど、きちんとした医師への気持ちがあれば乗り越えられる道だと話してくれました。もちろん、学費の面や今後の医学部受験までの第三者のサポートは、必要だと思うので、両親との話し合いが、きちんと出来る事も重要だとアドバイスをくれました。お兄さんは、医師になってからも、医師としての道のりに挫折する人が多い中、そのような志をもった医師が増える事は、大変喜ばしい事だと話してくれました。真剣に医師になる事について、語ってくれたお兄さんに、Bに「ドクターP」の話をしたところ、一度、お兄さん自身がドクターPと会って話をしても良いと承諾してくれたので、翌週、キャリアセンターに現れたドクターPに、その旨を伝えてみる事にしました。するとドクターPは、涙をこらえながら「ありがとうございます。」と、一言お礼を述べました。実は、ドクターPの妹が、突然の病から入院生活を送っているそうで、原因不明のその病名を突き止めたく、医師をめざす決意をしたと言うのです。Bにとって、人生で初めての医師をめざす人のキャリアカウンセリングでした。意志は、人を動かすものなど実感し、彼の強い想いから、パッションの「P」をとって、彼を「ドクターP」と名付けました。そのドクターPが、来年、近所のお兄さんの勤務する大学の付属病院に研修医として勤務するのだそうです。思えば彼の夢はあれから10年越しになるのでしょうか、「ドクターP」は、宣言通り医師になりましたが、彼の任務はこれからです。近所のお兄さんは言います、ドクターPは、医師になりたくてなったのではなく、妹を治療したくて医師になったのだから、医師になる道のりなど、彼にとっては過程でしかなかったのだろうと思うと話してくれました。ドクターPは、当時キャリアコサルタントとしてのBに、大事な事を気づかせてくれた学生の1人です。