登山家たちの転職⑤

5月 29, 2019

山小屋で偶然遭遇した、今後のキャリアアップを考える医師と、キャリアカウンセラーのKが考える、人生の分岐点は、全く異なるように感じましたが、実は共通点がありました。それは、「開業」と「転職」です。K自身は、日々、学生向け就職活動をサポートするべくキャリアについてカウンセリングをしたり、一般社会人の転職を支援する事には、喜びを感じてはいましたが、自分のキャリアデザイン的な観点から、今後の事を考えるにあたって、他に道はないのだろうかと道を探っている状況でした。医師である彼自身は、このまま大学の付属病院で、整形外科の医師として研究や診察を行っていく事に疑問はなかったのですが、妻の実家が開業医院である事から、彼自身もいずれは開業医になるのであろうというレールを敷かれてしまっているのだそうです。開業医になるのであれば、資金援助も惜しまないという妻の義理の父親は、若い年代からの開業を後押してくれるのですが、自分は、もう少し、多くの経験を積んでから、晩年、開業医となっても遅くはないのではないかと考えていると言うのです。なんとも、羨ましい話だと思っていると、彼も、Kのキャリアについての悩みを聞きたがったので、キャリアコンサルタントである事は伏せ、自分も現在の職場を離れ、開業を志すべきかどうか悩んでいる事を話しました。こう話していると、実際は、悩んでいると言いながらも、自分たちのキャリアに対する考えの軸は決まっていて、ただ、周囲の考えとの方向性の違いがある事が悩みなのだという事が分かりました。Kの場合は、妻が開業を拒んでいる事もあって、自分の考えるキャリアアップへの一歩を踏み出せずにいたのです。医師である彼は、開業医を志すよう勧めてくる義理の父親の気持ちに応えようと、彼なりに動いてみてはいたようです。長年お世話になっている大学付属病院とは違う環境で医師としてのキャリアを試そうと、「医師 求人」サイトなどでみつけた単発バイトやスポットなどで、あえて自分を他の環境に飛び込ませているそうです。実際、「医師 求人」サイトなどに掲載されている、単発バイトやスポットでは、医師としてのキャリアを積むまでの社会勉強には至りませんが、居心地の良い現在の医局を離れる事で、得られる医師としての経験はまだまだ未知数なのだという事は、実感しはじめたそうです。ここまで、初対面でありながらお互いの事を話してみると、実は2人とも何も悩んでいない事が分かりました。自分の中では、自分の選ぶ道は、ほぼ決まっていました。ですが、どう周囲にその意を告げればよいのかという問題が難点だったのです。翌日の早朝、2人で目指した山の山頂は、下山すると遥か彼方に見えましたが、同じ景色を見た者同士、今後の明るい展望をもって、現実に向かってみようという気持ちの整理ができました。ただ1人、山を登っただけでは、ここまで自分の考えに整理がつかなかったかもしれないと思うと、同じキャリアに悩む同士として、彼という存在に出会えた事に感謝する連休中の出来事でした。